建設業許可は取得して終わりじゃありません

建設業許可取得後にやるべき手続一覧

― 届出・経審・入札参加資格申請と法令遵守のポイント ―

建設業許可は「スタートライン」にすぎません。取得後も継続的な届出義務・法令遵守・経営状況の管理が求められます。

特に公共工事への参入を検討するなら、「経営事項審査(経審)の要否」の判断が極めて重要です。許可後の必須手続から経審・入札参加資格申請までを体系的に整理します。

📋 1. 許可取得後に必要な主な手続

① 「営業開始届」は必要か?

建設業法上「営業開始届」という制度は原則存在しません。許可通知書の交付時点で効力が発生し、別途届出の義務はありません。

⚠️ 例外:電気工事業を営む場合は、電気工事業法に基づく「みなし登録電気工事業者」の開始届出が必要です。また自治体によっては独自様式の届出を求めるケースがあるため、各都道府県の運用を確認してください。

※個人事業主の場合、税務署への「開業届」(所得税法第229条)は別途必要です。

② 毎年必須:決算変更届(事業年度終了届)

事業年度終了後4か月以内に、許可行政庁へ提出が義務付けられています。主な提出書類は、工事経歴書、直前3年の工事施工金額、財務諸表、事業報告書(法人)、納税証明書などです。

⚠️ 未提出の場合:5年更新時に更新不可となるおそれがあります。罰則規定(建設業法第50条:6か月以下の懲役又は100万円以下の罰金)も存在します。

③ 変更届(随時)

届出期限は変更内容によって異なります。

届出期限 変更内容
14日以内 常勤役員等(経管)の変更・交代、専任技術者の変更・交代・追加・削除
30日以内 商号・名称、役員(経管以外)、営業所の名称・所在地・新設・廃止、資本金 など
4か月以内 決算変更届、使用人数、健康保険等の加入状況、定款の変更

※2020年10月施行の法改正で「経営業務の管理責任者」は法令上「常勤役員等」に再編されています。実務上は「経管」の通称が使われていますが、届出書類は改正後の正式名称に従います。

届出遅延は監督処分(指示処分等)の対象となる可能性があります。

④ 5年ごとの許可更新

📌 有効期間:5年間(建設業法第3条第3項)

更新申請は満了日の30日前までに行います。受付開始は知事許可で満了日の2か月前、大臣許可で3か月前が一般的です。

更新時に確認される主な事項は、過去5年分の決算変更届の提出履歴、専任技術者・常勤役員等の要件維持、財産的基礎です。

⚠️ 満了日を1日でも過ぎると更新不可。新規申請が必要となり、許可番号も変わります。

⚖️ 2. 遵守すべき主要法令

■ 建設業法

主任技術者・監理技術者の配置義務(第26条)、一括下請負の禁止(第22条)、下請契約の適正化(第19条)、標識掲示義務(第40条)、帳簿保存義務(第40条の3)。違反は指示処分→営業停止→許可取消と段階的に重くなります。

📌 2025年12月12日 改正建設業法 全面施行

著しく低い労務費等による見積依頼・見積提示の禁止、原価割れ契約の禁止、工期ダンピング対策の強化が施行されました。「標準労務費」に基づく適正見積もりが法的義務となっています。

出典:国土交通省(2025年11月14日)

■ 建築基準法

建築確認、完了検査、技術基準適合義務。設計や確認申請代理は建築士の独占業務であり業際に注意が必要です。

■ 労働安全衛生法

安全管理体制の構築、作業主任者選任、特別教育の実施等。建設業は労災発生率が高く、遵守が特に重要です。

※労働保険・社会保険の手続代理は社会保険労務士の独占業務です。

■ 廃棄物処理法

マニフェスト(産業廃棄物管理票)管理、産業廃棄物処理委託契約の締結が義務付けられています。

🏛️ 3. 公共工事に参入する場合の追加手続

公共工事を元請受注するには、以下の3ステップすべてが必要です。

❶ 建設業許可
取得済み
❷ 経営事項審査
(経審)
毎年受審
❸ 入札参加資格審査
(指名願)
発注機関ごと

いずれか一つでも欠けると入札に参加できません。

📊 4. 経営事項審査(経審)とは

公共性のある施設・工作物に関する建設工事を発注者から直接請け負う建設業者に義務付けられた客観的経営評価制度です。下請として公共工事に入る場合は原則不要です。

⚠️ 有効期間:審査基準日(決算日)から1年7か月。「受審日」や「通知書受領日」からではありません。期間切れで公共工事の契約締結が不可となるため、毎年の受審が実質必須です。

出典:国土交通省 関東地方整備局

経審の流れ

❶ 決算確定
❷ 決算変更届
提出
❸ 経営状況
分析申請
(登録分析機関)
❹ 経審申請
(都道府県等)
❺ P点通知

審査項目

区分 項目 内容
X1 完成工事高 業種別の年間完成工事高
X2 自己資本額・利益額 経営の安定性
Y 経営状況分析 財務諸表に基づく8指標(登録分析機関が算出)
Z 技術力 技術職員数・元請完成工事高
W 社会性等 社会保険加入、防災活動、建設機械保有、CPD等

これらを総合したP点(総合評定値)が入札ランク(格付け)に影響します。

🏗️ 5. 入札参加資格申請(指名願)

経審だけでは入札に参加できません。国(地方整備局等)、都道府県、市町村など発注機関ごとに申請が必要です。多くは2年ごとの定期受付制です。

【要確認】受付時期・電子申請方式は年度ごとに変更の可能性があります。各発注機関の公式サイトで最新情報を確認してください。

🔍 6. 経審は必ず受けるべきか?

必要なケース 不要なケース
・元請として公共工事を受注したい
・官公庁案件中心に事業拡大予定
・経営力を客観的に証明したい
・民間工事のみ
・公共工事は下請中心
・小規模で公共工事の予定なし
💡 将来的に公共工事への参入を見据えるなら、許可取得直後から財務体質の改善、技術者確保・資格取得支援、社会保険の完全加入、CCUS登録など、P点向上に直結する経営体制の早期整備が重要です。

👨‍💼 7. 行政書士の支援範囲(業際整理)

行政書士の対応範囲 他士業の専管事項
・建設業許可申請(新規・更新・業種追加)
・決算変更届・各種変更届
・経審申請
・入札参加資格申請
・契約書等の書類作成
・税額計算・税務申告 → 税理士
・社会保険・労働保険手続 → 社労士
・建築確認・設計 → 建築士
・紛争・訴訟 → 弁護士
・登記 → 司法書士

🛡️ 8. リスク管理ポイント

リスク 影響 対策
決算変更届の未提出 更新不可・罰則 決算確定後すぐ着手。年間スケジュール管理
専任技術者の退職 許可要件喪失 後任の事前確保。資格取得支援
常勤役員等(経管)の不在 許可要件喪失 後継者の計画的育成
社会保険未加入 W点減点・入札不利 適切な加入手続。社労士と連携
P点対策なしで経審受審 ランク低位固定 経審前に技術者配置・財務改善を検討
経審の有効期間切れ 公共工事の契約不可 決算後速やかに分析→経審のスケジュール管理

9. まとめ

建設業許可は「取得して終わり」ではありません。

❶ 毎年の決算変更届(事業年度終了後4か月以内)
❷ 変更届の期限管理(14日 or 30日を正確に把握)
❸ 5年ごとの許可更新(満了日の30日前まで)
❹ 公共工事参入なら経審+入札参加資格申請

これらは事務手続ではなく、経営戦略そのものです。公共工事参入を視野に入れるなら、許可取得直後から経審を見据えた体制整備に取り組んでください。

📅 2026年2月25日時点の情報です。法令改正等により内容が変更される場合があります。

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